とらこさんに『しあわせになれると?』の差分絵見せてもらって、衝動的に書かずには居られなかった!
こんなこと言ってるけど、杏理はきっと自分から離れるなんてできないよ!
そーじくんのためにはそうしなきゃいけないの と思って口に出しかけるけど、先に涙がだだ漏れして嗚咽にまぎれて何言ってるのか意味不明状態になるのがオチ/(^o^)\
お借りしました ⇒ マイラブそーじくん。
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いつものようにBL苦手な方にはおすすめ出来ません。
* * *
柔らかな日差しの中を、愛しい人とふたりで歩く。
いつか夢見た金色の光の中を、青く晴れ渡った空の下を、木々の新緑が鮮やかな街を。
嬉しくて幸せで、寄り添って歩く恋人を見上げてささやく。
「ねーぇ、そーじくん」
「何?」
「あのね、大好き」
他人には見せない優しい笑顔で、彼は答えた。
家族にだけ見せる微笑で、
「俺は嫌いだな」
「……え?」
とっさに理解できなくて、間の抜けた呟きを漏らした。
「ガキのころから男にケツ掘らせて生きてきたんだって? ……汚ねぇな」
「……あ、……」
「触んなよ、汚らわしい」
呆然と立ち尽くす杏理に、見下げ果てたと言わんばかりの目で創路が吐き捨てる。
心臓を貫かれたほうがまだ痛くないに違いない、と杏理は思った。
胸がぎゅうっと締め付けられる。重くて苦しいものに押しつぶされそうで、……いっそ一息に殺してほしい。
向けられた事のない冷え切った眼差し。藤色の視線。昔浴び続けていたその温度。
男娼風情が。小汚いガキが。何故こんな日差しの中を歩けると思っている?
見開いた目には、冷め切った視線さえ合わせられない。それさえも汚らわしいと。
―――いや、違う。これは誰、だ。
見たことのある桃色の髪。見たことのある紫の瞳。見たことのある、
自 分 、 だ 。
「分かっているのか? 自分がどれだけ汚らしいか、堕落した人間の屑か」
自分が、血まみれの手を持ち上げる。
「お前なんかに愛される価値なんて無い。……思い出せよ。
この手がどれだけ血に汚れているか、その身体がどれだけの男に蹂躙されてきたか」
黒いシャツを着た男の自分に、血塗られた手で頬に触れられる。
「愛される資格なんてどこにもないって、分かってるよな?」
「わ…かってる。分かってる……」
白い頬を、血とそれ以外の液体が流れていく。
「男の癖に女みたいに装って。ニセモノなのになぁ」
口元に手を当てて、くすりと彼は笑う。
「名前も性別も偽って、本物の何かなんて手に入ると思うなよ?」
「いらないもの……そんなの……無理だもの……」
「分かってるなら誰かに近づくな。縋るな。そんな汚い手で触っていいものなんて何もない」
震える指が、鏡に映ったような自分に掴まれた。
男だったはずの自分。どこかに捨ててきたつもりだった過去がそこに居る。
分不相応な未来を望まないよう、戒めるために。
「幸せになんかなれないんだよ。俺もお前も」
※
苦しげなうめき声で、創路は目を覚ました。
傍らで眠る杏理が酷くうなされている。震える手に、額を伝う脂汗。
唇が薄く開き、助けを請う。
「……たすけて……だれかたすけて……」
杏理はすぐ傍にいる自分ではなく、いつもどこにも居ないだれかに助けを求める。
初めての事ではない。もう何度も、だ。
その姿に創路は唇を噛み、右手をぎゅっと握り締めた。
……まだ、夢の中まで助けに行けるほど頼られてはいない、という事か。
「……おい! おい杏理、起きろ!!」
「ひっ! ……んぅ……、え?」
びくっと身を跳ねさせ、自分を抱くようにして目を見開く。
そしてそこが恋人の部屋であることに気付き、初めてぎこちない笑顔を作るのだ。
抱き寄せて、伝い落ちる涙を舐めとってやる。塩の味が舌先をころがった。
「……うなされてたぞ」
「え、あ、あら? そうなの? ごめんね、起こしちゃった?」
「いや。気にするな」
腕の中の身体はまだ細かく震えている。
何がそんなに脅えさせるのか。一体何から守ってやればいい?
杏理はいつかそれを教えてくれるのだろうか。
創路は気付かれないようにこっそり小さな溜め息をついた。
※
愛しい人に抱きしめられて、その腕の中で幸せと申し訳なさにまた涙が溢れそうになる。
汚らしいニセモノの自分には、そんなことしてもらう価値なんてないのに。
それなのに、この場所を失うくらいなら、いっそ死んでしまいたいと思わずには居られない。
頼っちゃいけない。縋っちゃいけない。そんな資格アタシには無い。
本当は傍にいることすらおこがましい。幸せなんて望めない。
ごめんなさい。あと少しだけ。少しだけ傍に居させて。
そうしたら此処から離れてどこか遠くに行くから、彼の人生を歪めてしまう前に。
どうかあと少しだけ、夢のようなこの時を。
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