BNで描こうかなって思ってるネタ!
杏ちゃんの最期です。
脳内名称「昆布ルートデッドエンド」。
どうしようもない。
前に書いた「もうすぐこの国は終わるだろう」が「この組は」に聞こえた、というだけでここまで変な展開を捏造できる自分の脳みそに万歳!
しかしこれを漫画っぽく描こうって正直私じゃ無謀だ。
お借りしました ⇒ みっくみく、だいごさん
前提:なんか鉤辻組殲滅の動きが起こってるよ!
みちゅが他の全組織に爆弾仕掛けたせいかも!/(^o^)\
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血の臭いがする風が、吹き抜けていく。
「くっそ……追いつかれたか」
「そうみたいだね。どうしようか」
追っ手は百を下らないだろう。
散り散りに別れて逃走中の鉤辻組、その若頭の右には白髪の青年、左には和装の麗人。
言い換えると、キングの駒たる若頭を守るナイトはたった2つ。
「どうするって……何言ってんだ、戦うしかねーだろ!」
「無茶言わないのよぉ、若。その怪我でどうしようって言うの?」
杏理が指摘する通り、醍吾の押さえた脇腹からは今も血が滲み続けている。
致命傷ではないが、深手だ。
未来の手当てがあってなお、戦う能力は大幅に削がれている。
「じゃあそれこそどうするんだよ!」
「……ここはアタシに任せてね。未来、若をお願いね」
「あぁ」
「何馬鹿なこと言ってるんだ、皆一緒でないと……っ」
刀を抜いて2人に背を向けた杏理に、カッと目を見開いて醍吾が手を伸ばし―――
届くことなく、力なく降ろされる。崩れ落ちる身体を支えるのは、医の道を志した青年。
未来の手に、細い銀の針が光っていた。
「わっがままよねぇ、若ったら」
「まぁ、それがいいんだけどね」
「まったくよね、うふ」
んっ、と軽い声を漏らして、未来は肩を組むように若頭の身体を支える。
若干よろめきつつ数歩歩み、少しだけ首を回して振り返った。
視界の隅に紅い着物がはためく。
「帰って来いよ?」
「あったりまえじゃなぁい? アタシだって殺人鬼と呼ばれた女よぉ」
「男だろ」
「あはっ。……頼むな、未来」
「……ああ。任せてよ」
「ちゃんと逃げ切れよ、俺が生きてるうちに」
「なら鈍行でいっか」
「ばっか。新幹線で」
「準急くらいで勘弁」
「仕方ない、特急にまけてやる」
軽口を叩きあいながら、2人と1人の距離は離れていく。
「じゃあ、な」
「また、だろ。『どっちにしろ』」
* * *
どれほど斬ったか分からない。
「……っは、あ!」
銃弾などとうに尽きた。
「はあっ……はぁっ……」
もう血臭を判別することも出来ない。
人間の鼻はそこまで丈夫に出来ていない。
携えた刀ももう限界が近い。
自分か、刀か、どちらが折れるが先か。
全身を朱に染めて、不思議と痛みは感じなかった。
あるいは鼻と同様に麻痺しているのかもしれない。
恐怖などない。思考もない。
ただひたすらに、目の前に出てきた者を斬り続ける。
背に守るものがある以上、決して通しはしない。
どれほどの傷を負おうとも、この先には行かせない。
彼らはもう逃げ延びただろうか?
家族と呼ぶ事を許してくれた彼らは、誰も欠かずに安全な場所へ行けただろうか?
どうかそうであってほしいと、心から祈る。
神は悪人の自分の願いなど、きっと聞いてくれないだろう。
だがそれでも、祈らずにはいられなかった。
どうか。どうか。
皆、無事で。
あの優しい場所が傷付く事がないように。
気付けばもう、誰一人立っている者はなかった。
いくらか聞こえる呻き声。
それよりもずっとずっと多い屍。
もう鉤辻を追う者はない。
杏理は自分が倒れたことに気付かなかった。
赤い衣がふくらみ、柔らかに血の海に落ちる。
きらきらと輝いていた時間が、心のどこかを流れていく。
走馬灯って本当にあるんだと、思考する力をすでに杏理は持たない。
最期に瞼に浮かんだのは、高く澄みわたった遠い日の空。
そして、太陽よりも明るく輝く幼い笑顔。
しかしそれも、すぐに白く溶けて―――
* * *
死者113名。重傷者27名。民間人の被害は無し。
それが「殺人鬼」杏理が最後に振るった刃の犠牲者の総数となった。
100名以上と対峙しながら一歩も引かず、
見事にしんがりを務め上げた功績を讃えて、彼の墓には「鉤辻 杏理」の名が刻まれた。
「どうか、皆の笑顔を守れていますように―――」
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蛇足だけど最期に杏ちゃんが見た幻はもちろんしょただいごだよ!
暗闇だった杏ちゃんの世界に光が差した瞬間が、ある意味杏ちゃんの誕生だったのかもしれない。
そして最期もまたそこへ回帰していく、と。
巡り巡る時を超え いつもあなたの所へと
この心 舞い戻ってゆく
と。
杏ちゃんは皆に笑っていてほしいと心底思っているけれど、
その皆の中に自分自身を入れて考えられないのが弱点。かもしれない。
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