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ついったSS格納。
エイプリルフールのアルバさんbotがガチホモになっちゃった!を受けて。
「わたしちょっと生やしてきます! ひぃひぃ言わせて差し上げますから、待っててくださいね!」

陽子まで男の娘とかまじ誰得(^ω^)
 


* * *


◎エイプリルフールその後。


『アルバさんは殿方のほうがお好きなのですね!
 わたし性転換してきます、探さないでください!』

……という、頭がついに沸いたかと疑いたくなるような置手紙を残し、
パン屋の女店主が失踪してから実に2週間。

はじめは当のアルバートを含め皆、冗談だろうとたかを括っていたが、
そろそろ「もしや本当に……」という空気が漂い始めた頃だった。

 

今日もココノエベーカリーの前を『散歩中に偶然通りかかった』アルバートは、
closedの看板が掛かった暗い店内を軽く覗き込んで無意識の溜め息をついた。

「どこ行っちゃったんだかねぇ、陽子ちゃん……」

もしかして本当にそろそろ生やしてる頃じゃないだろうか、という嫌な予感が頭を過ぎる。
男好きだなんて嫌疑を掛けられただけでもたまったもんじゃないのに、
この上惚れてくれた女が男になった日にはいったいどうしたらいいのか。
ちょっとどんよりした。

「本当に―――」
「アルバさんっ!!」

独り言をかき消すように、背後から自分を呼ぶ声。
少なくとも陽子ではない。張りのある、若い男の声だった。

「あん? おぃさんに何か……よぅ……」

返答が尻切れとんぼに消えて行く。
咥えた煙草がぽとりと道に落ちたが、アルバートは気付かなかった。

「お待たせしてごめんなさいね、いや、ごめんな! 早く会いたかった……!」

若い男だった。
どこか見慣れたアッシュブロンド。
よく見る気がする蒼い瞳。
高さこそ違えど、声の響き。
……それよりなにより、顔の作り。

「よ、よぉこちゃん……かぃ……?」
「はい。でももう改名しましたのよ、違うわ、したんだぜ。陽って呼んでくれよな!」

陽子ちゃんの喋り方って男だとカマくさくなるのな、と
アルバートは真っ白な頭の隅でぼんやりと考えた。

これだけは女の陽子と変わらない、すこし低めの体温が、すいっと自然に寄せられる。
首に回されたしなやかな腕。
そんなところまで手術するはずもないから、少し筋張っているように思うのは気のせいか。
熱い甘い息が首筋に触れる。

「安心しろよな? ちゃんと役に立つもの付けてきたから。ひぃひぃ言わせてやるぜ?」

おぃさんより言動がおっさんくさいぜ陽子ちゃん(♂)……。
などと突っ込みを入れる余裕も無く固まったままのアルバートの顎に、陽(仮)が手を掛けた。

ゆっくりと寄せられる唇。

ただの男なら思い切り振り払うところだが、
相手が勘違いの挙句自分の為に男になってしまった女ではもうどうすればいいのかも分からない。

そうだ陽子ちゃんだ。
たとえ下になんか生えようとも陽子ちゃんは陽子ちゃんだし、唇なんて女でも男でも変わらない。

覚悟を決めてその背に手を回し、目を閉じた刹那、

「だめですうううぅうううう!!!」
「ぅおっ!?」

よく聞きなれた響きの悲鳴と共に、後頭部に打撃。連鎖して額がぶつかり火花が散る。

「ばかぁ! 兄さんのばか!! そこまでしろとは言ってませんっ、アルバさんから離れてー!!」
「あっはっは、止めてくれなかったらどうしようかと思ったよ陽子!」

前後から聞こえる聞きなれた声に、もう何がなんだかよく分からなくなって
アルバートは額に手を当てた。

「……おぉ、いつもの陽子ちゃんと男の陽子ちゃんかぃ?」
「違います! アルバさんもばかぁ……」

涙目でひっついてきた陽子(女)の頭をぽんぽんと撫で、
気の抜けた目で陽(仮)を眺める。

「えーと、お前さんは」
「はじめましてだね、アルバート君! 妹の嫁と聞いているよ!」
「……陽子ちゃん、おぃさん嫁なのかぃ?」

無言で胸元に顔を擦り付けている陽子からの返事は無い。
諦めて、陽子にとてもよく似た男に視線を戻した。

「僕は九重昴、陽子の兄だよ! よろしく頼む、老けた義弟よ!」
「老け……どうも、アルバートだ」
「アルベルト?」
「アルバート!」

苦い表情をするアルバートを尻目に昴はからからと笑い、

「久しぶりに再会できた恋人達の邪魔をするほど、僕は野暮ではないからね!
 ちょっとそこらへんを見てくるよ!」

―――と言い残して姿を消した。

「陽子ちゃん、兄ちゃんと似てるんだな」
「小さい頃はよく間違えられましたわ」

なんとなく、しばしの沈黙。

「アルバさんは殿方のほうが好きって伺ったから。もう男性になってしまおうと思ったのですけど」
「誤解だ誤解。おぃさんにそんな趣味はねぇよ」
「手術しちゃってから誤解だって言われたら遅いから、兄さんにわたしっぽく演技してって頼みましたの」
「……賢明だぁね」

女性ならではのふくよかな胸とやわらかな身体。
陽子の細い腰を抱き寄せて、アルバートは甘い香りのする髪に顔をうずめた。

「あっ、アルバさん」
「陽子ちゃんはそのまんまでいいと思うぜぇ……? それに、」

続く囁き声を聞き取れたのは、みるみるうちに頬を真っ赤にした陽子だけ。

「……な?」
「はい……」

真っ赤な頬を隠せもせず、アルバートの腕に抱かれたまま陽子はこくりと頷いた。

 

 

なお。
その後、昴が陽子の演技をしながら村中をうろつきまわったため、
「陽子さんが男になっちゃった!」という評判は瞬く間に村を駆け巡り、
その訂正には結構な時間を必要とすることになった。

 

 


◎その後
「兄さんは『心配しなくてもノーマルな僕がいきなりおっさんに手を出すのは辛いな!
 まずは女性みたいに可愛い男性から始めないと』って言ってましたけど、
 さっきは見ててちょっぴり泣きそうでしたのよ?
 アルバさんが兄さんに取られちゃったらどうしようって」
「あー……手を出されるつもりもないから安心しなぁ?
 たぶんあっちもその気は無いだろうし……」

(遠くからクラィスの怒声とBのはしゃぐ声とさっき聞いたような笑い声)

「……」
「……女みたいに可愛い……」
「兄さん、まさかBくんに何か……」


◎陽子の兄弟メモ
九重 日暮(ひぐれ):長兄。43歳。真面目で勤勉。既婚で小学生の娘が居る。父親似。
九重 昴(すばる) :次兄。30歳。陽気で人をからかうのが好き。独身。母親似。

九重 サクラ :6歳。日暮の娘で、陽子の姪。やや内気で優しい性格。陽子を姉と慕う。後に孤児となり、暗黒街と呼ばれる街へ流れ着く。

親類陣も絵にしたいなー。サクラ? うん、たぶんその彼女です。

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